花粉症の対策はセルフケアと病院での治療の二つに大別されます。

セルフケア
 花粉症の原因となる花粉を避ける工夫が重要です。天気が良く風の強い日に花粉の飛散が多くなるので、天気予報や花粉情報に充分に気を付けて下さい。また、飛散時期には寝不足やストレスをさけ体調管理を心がけて下さい。

1)花粉を屋内に持ち込まないための工夫

・飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。換気時は窓を小さく開け、短時間にとどめる。
・表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避ける。
・帰宅時、衣類や髪をよく払ってから入室する。
・こまめに掃除を。特に窓際を念入りに掃除する。
・飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。

2)外出時の注意

・飛散の多い時の外出を控える。
・外出時に、マスク、メガネを使う。
・帰宅時、洗顔、うがいをし、よく鼻をかむ。

治療法
1) 薬物療法

 アレルギーの症状の原因であるヒスタミンやロイコトリエンを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬の内服をしたり、ステロイドの点鼻薬などが使用されます。
 症状の程度やタイプによって異なる薬が使用されますので、よく自分の症状を伝えて処方してもらうことが重要です。(⇒詳しくはガイドラインを参照)
 花粉症治療は初期治療が重要です。早めに治療を開始することで症状を軽くすることができます。抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬やステロイド点鼻薬は、症状が少しでも出た場合は飛散前でもすぐに内服するべきですが、症状がない場合は飛散開始日(飛散開始予測日)に治療を開始すればよいでしょう。症状が強い人は飛散前の治療開始もおすすめです。薬の種類によっては、さらに早い内服を開始する必要がありますので、主治医の先生とよく相談してください。
 近年、一般的治療で改善しない重症スギ花粉症患者様には抗IgE抗体療法(2週~4週に1回の皮下注射)が可能となりました。大変効果は高い薬剤ですが、高価な薬剤であり、血液データに応じて3割負担で薬剤費は7,000~70,000円となります。興味がある方は、医療機関でご相談ください。
可能な医療機関が限られますので、かかりつけ医で行っていないようであれば大学病院耳鼻科に紹介状をもらってから受診ください(八戸市民病院耳鼻科、むつ病院耳鼻科でも対応しています)
 
2) 免疫療法

 内服や点鼻による治療は、症状をすみやかに改善しますが、アレルギー体質自体を治療するわけではなく、対症療法です。治療の中止で症状は再燃します。アレルゲンを少量ずつ、長期間(3~5年間)投与することによって、アレルギー体質が改善し、症状が出なくなったり、軽くなったりすることが期待できます。皮下注射と舌下投与の2種類の方法があります。舌下免疫療法は、注射が不要で、月1回程度の通院で治療可能です。
治療可能な医療機関は下記を参照ください。
トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ
 
3) 手術治療

 鼻閉が強い場合、腫脹した鼻粘膜を減量したり、曲がった鼻中隔を矯正することで鼻閉が改善することがあります。また、鼻粘膜を焼灼するレーザー手術によって、鼻閉を中心とした花粉症症状の改善を期待できます。レーザー手術は、通院治療で可能ですが、効果は永続するわけではなく、可能な医療機関は限られています。手術治療の適応については、検査や診察が必要です。医療機関でご相談ください。
 


 本邦ではこれまでに約60種類の花粉症が報告されています。その中でも青森県における代表的な花粉症を引き起こす原因として、スギ、カモガヤなどのイネ科、及びヨモギ・ブタクサなどの雑草があります。

 花粉症の症状は「くしゃみ」「鼻みず」「鼻づまり」ですが、これらは本来、異物の侵入に対して体を守る働きです。すなわち、「くしゃみ」で異物を追い出す、「鼻みず」で洗い流す、「鼻づまり」で異物の侵入を阻止する、という目的にかなった反応です。

 しかし、これが体にほとんど害の無いような花粉などに対して過剰に反応し、アレルギーを起こして困ったことになるのが花粉症です。この反応を引き起こす物質が抗原と呼ばれます。




 花粉症は感作と発症の二つのステージから成り立ちます。

感作
 人の鼻に抗原が侵入すると、体の中のリンパ球の働きでこの抗原と反応する抗体(IgE抗体)が作られます。この抗体が鼻の粘膜にある肥満細胞(マスト細胞)と結合することで、アレルギー反応を引き起こす準備状態が作られます。このようにして感作が成立します。

発症
 感作が成立した後に抗原に再暴露されると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質と呼ばれる物質が放出され神経を刺激したり、血管を刺激したりして症状が発現します。これが発症と呼ばれる状態です。症状は鼻だけに限らず、目にも同じようなアレルギー反応で目のかゆみ、涙、充血を起こすことも少なくありません。
 感作されたすべての人が発症するのではなく、体の中にIgE抗体が作られた約半数が発症すると言われています。この理由は未だに不明ですが、遺伝的な体質や抗原の量および抗原性を増強させる大気汚染などの環境因子も関わっていると考えられています。




スギ花粉症
 スギ花粉症は本邦では最も多い花粉症です。全国では人口の30%程度近くが、また青森では年齢にもよりますが15%から、40歳台では30%近くがスギ花粉症であると推測されています。成人に多い花粉症でしたが、最近では小児にも増えてきました。
 鼻と目の症状が強く、花粉飛散が多い年では喉の症状や全身倦怠などの多彩な症状がでてきます。
 花粉の飛散時期は青森県では3月から5月上旬・中旬までです。



スギ
イネ科花粉症
 青森県ではスギ花粉症に次いで多い花粉症です。空き地や道ばたに生えているカモガヤなどが代表的な花粉の抗原となります。花粉の飛散距離は短く、通学中の小児などが鼻症状を引き起こす原因として重要な花粉症です。
 花粉の飛散時期は青森県では5月中・下旬から7月上旬頃までです。



カモガヤ
ヨモギ・ブタクサ花粉症
 青森県ではスギ花粉症、イネ科花粉症の次に多い花粉症です。空き地などに生えています。花粉の飛散距離は短いですが、発症すると鼻と目の症状だけでなく喉の症状も比較的多く認められます。
 花粉の飛散時期は青森県では8月下旬から9月下旬頃までです。



ヨモギ



 花粉捕集器には数種類ありますが、青森県ではダーラム型とロータリー型の二種類を用いて観測しています。

ダーラム型
 ワセリンを塗ったスライドグラスを捕集器の中央に設置し、24時間ごと(朝9時)に交換します。スライドグラスを染色後に顕微鏡で観察します。1平方センチあたりのスギ花粉数を算出して前日のスギ花粉飛散数とします。この方法は全国で一般的なもので、青森県花粉情報研究会でもこの方式によるデータを公表しています。
ロータリー型
 ダーラム型は地面と水平にスライドグラスが設置されていますが、ロータリー型は斜めに設置されています。後方に羽根が付いているので、常にスライドグラスは風上に向かって位置します。
 この方法はダーラム型よりも鋭敏に花粉を捉えることができるので、飛散開始時期の参考として使用しています。
ダーラム型捕集器
ロータリー型捕集器

スギ花粉の顕微鏡写真



青森県花粉情報研究会の公表データ説明
初観測(飛散)日 ダーラム型で始めてスギ花粉が観測された日
飛散開始日 ダーラム型で二日以上連続して1個以上のスギ花粉が観測された最初の日
従って、飛散開始日と公表された以前にも微量ながらスギ花粉は飛散しており、花粉に敏感な方は飛散開始日の前でも花粉症を発症することがあります。


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